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[小説] 【文スト】母の記憶【太宰治】

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作者さんの説明
―蝉時雨が降り注ぐ、夏の日の事だった。 父が亡くなって僅か数ヶ月。 後を追うように母が亡くなった。 葬儀等の供養も一通り終わり、取り敢えずと形だけ整えておいた遺品達に目を通す。 両親は、謎が多い人達だった。 高校生の私が死ぬまで贅沢出来るほどのお金を遺して、だ。 これ程の大金、一体どうやって稼いだのだろうか。 私は両親の仕事を知らないから、分からなかった。普通ならきっと、祖父母に尋ねるのだろうが、生憎私にはその類の親戚は居なかった。 母の書いた遺言を、見ていた。 趣旨は至って普通で、特筆すべき過去などは一切無かった。 お金は遺しておいたからそれで暮らしなさいとか、煩わしかったら今の家から出て行っても構わない、お金が足りなかったら売りなさい、とか、そういう事だった。 閉じて元の封筒に戻そうとすると、中でカサっと音がした。 逆さまにして振ってみると、一つのメモが出てきた。 それには、どこの者かも解らない人の、住所と名字だけが記されていた。

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2016年10月23日 19:00に投稿されたエントリーのページです。

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